FC2ブログ
ユネスコ記憶遺産とストレステスト
Date:2011-07-29(Fri)

昨日のクローズアップ現代。山本作兵衛が紹介され、炭坑で栄えた筑豊を描いた『青春の門』の五木寛之が登場した。「青春の門」は私が十代後半から断続的に出され、本屋に出されるたびに読んだ。主人公の伊吹信介と年代が合致したこともあり愛読書のひとつになった。

テレビドラマ化や映画化、漫画化もされ、本を通して、炭坑という世界を知った。その炭坑の営みを記録した歴史的文書などの保存と振興をめざすユネスコの「世界記憶遺産」に先月、福岡県田川市などが所有・保管する炭鉱記録画家、山本作兵衛(1892~1984)の絵画や日記などが登録された。記憶遺産という言葉さえ私は知らなかった。

山本作兵衛は現在の福岡県飯塚市生まれ。7歳ごろから父について炭鉱で働き始め、採炭夫や鍛冶工として、筑豊地域の中小の炭鉱で働いた。63歳で炭鉱の警備員として働き始めたころ、孫らに当時の生活を伝えようと炭鉱の絵を描き始めるようになったとか。大それた思いもない素直な作品群だ。炭坑での生活を絵で描き、リアルさは、確かにすごい。労働の現場の厳しさをさりげなく描いた絵でもある。

名もなき炭坑夫の目は、上から目線ではなく、現場目線で生活目線でエネルギー確保のしんどさを描いている。ガス爆発や現場でのケンカなど、ユネスコの目のつけどころは、意外というか、日本人が忘れている大事な目線を知らせたとも言えるのではないか。

本題に入るが、菅首相の言い出したストレステスト、耐性検査とも言われているが、私には、未だにしっくりこない。上から目線というか、現場目線や生活目線からは、かけ離れた存在にうつる。突然の提案だっただけに、よけいにしっくりこない。内容も複雑で、再稼動の条件にすべきものなのか、疑問がつきまとうからだ。再稼働の問題を巡り、各地で混乱が広がっている要因にもなっている。

政府は先週末、テストの実施計画を策定し、電力各社に実施を指示した。ある知事は「気休め」と切り捨てている。失礼だが、理解を得るどころから再稼動を妨げる要因ともなっている。

確かに、ストレステストは、ホームページなどで勉強する限り一定の意義はあると考える。二重三重の原子炉の安全審査には新たな視点での画期的な審査でもあるように思う。現在、欧州で実施し、チェック方法も、安全向上策の実効性の再確認にもなるとも教わった。

だが、その基本は、設計図や部品の強度データを基に計算し、安全の余裕を見積もる机上のテストなので、欧州では原発の運転と無関係に行われている。

審査上、長期的な安全性の確認のためには有効だが、本来の安全性向上と再稼動の条件と合致できるものか、再稼働の可否を最終判断する仕組みに、組み入れることが妥当か、本来、議論すべき原子力安全委員会の議論が十分でないまま進んでいる。

山本作兵衛の日本で、それほど評価されなかった作品がなぜ、ユネスコで評価されたのか。炭坑の苦しさ、男女が混浴で炭坑の汚れを落とす姿など、素直にさりげなく描く作兵衛、ユネスコ記憶遺産として評価している。ここに大事な目線があると思う。盛夏を迎え、エネルギー確保の大事な目線が失われているように私には感じる。
スポンサーサイト



【2011/07/29】 | ページトップ↑
| ひとことトップ |