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鉄塔事故の課題・・・。
Date:2008-09-17(Wed)

関電・美浜発電所から嶺南変電所へ。電気を送る27万5千ボルトの特別高圧送電線の送電鉄塔。突然折れて、作業員4人が鉄塔から転落。全身を強く打ち、2人が死亡、2人が重傷。改めてご冥福とお見舞いを申し上げたい。

昭和40年代、50年代と鉄塔の材料技術も進歩し、保守性も考慮されてきた。鉄塔や送電線は、台風の多い沖縄、雪国の東北とその強度、材質などおのずと工夫がされている。考えられない事故だが、原因究明を待つことは、いうまでもない。

ところで、テレビ報道で『関西電力の調査では、折れた個所では柱に縦方向の力が加わり、その力が柱が耐えられる限界を超える「座屈」という現象が起きていた』と報じられた。「座屈」という言葉はなんですか、との問い合わせがあった。この段階で語るのは不謹慎だが、今回の事故の技術的なポイントかもしれない。技術的には難しい分野だ。機械工学うち材料力学の専門用語。英語では確か、Buckling。船の構造強度で重要な分野だ。

わかりやすく説明すると、細長いプラスチックの物差しを想像してほしい。暇な折、両方をもって曲げたり戻しらりして遊んだ記憶があると思う。 まず、その物差しを両手で引張ってみる。ちょっとやそっとの力では、物差しは壊れない。次に、その物差しを両側から押してみる。今度は、物差しは、グニャーと曲がる。さらに力を入れると、簡単に折れてしまう。

このように、細長い物体は、引張ったときにはその材料の強度いっぱいまで耐えることができる。ところが、圧縮したときには、材料本来の強度よりもはるかに小さな力で折れてしまう。この現象を「座屈」という。

この「座屈強度」は、材料の強度とは無関係に、純粋に幾何学的な条件だけで決まる。つまり、棒なら細長いもの、板なら薄いものが、座屈をおこし易い。このことが、座屈が橋梁や鉄塔のような鋼構造物で問題になる理由の一つでもある。現実に鉄塔にとりついた北陸の雪は団子状になると水分が多く、重い。

昔はあまり良い材料がなかったので、橋でも、建物でも、結構ごつい作りに(棒なら太く、板なら厚く)なっていた。例えると、パリのエッフェル塔と東京タワーの違い。材料が良くなかったので、ごつい作りにしないと持たなかった。 しかし、近年、良い材料が次々と開発され、同じ鉄でも、強度的に優れたものが使われるようになってきた。そのため、以前に比べ、相当にスリムな構造物ができるようになった。

ところが、座屈強度は材料の強度とは無関係に、スリムなものほど起こり易い、という性質を持っている。その結果、鋼構造物は、昔に比べ、座屈が起こり易くなっている。だからといって、現在の鉄塔がそれに該当することではない。それも考慮して鉄塔は組み上げたれている。

これは一般論で、近年、橋梁など鋼構造物で座屈が問題となる理由。 座屈は、いわば技術の進歩によってクローズアップされるようになった問題、といえる。専門家でないので、この辺でやめるが、鉄塔は全国津々浦々までの問題、原因究明は、しっかりと行うとのこと。

もうひとつの課題は、建設業界にも言えるが、高所の技術的な作業に若者がいないという現実だ。鉄塔作業は、安全と技術が優先される。いわばとび職的な専門技術職だ。敏捷性や経験も伴う。電力マンでも特殊な職場で、男儀がある方が多かった。話を聞いても、誇りが感じられた。一方で、技術の進歩に伴って、合理化や効率化が進んだ分野でもある。

最近では、 「きつい」「危ない」イメージが先行して、建設業界の高所作業と同じように、人材不足が課題の一つだ。とにもかくにも安全は何よりも優先されるべきであり、技術的な課題、人材確保など重要な課題であることは確かだ。
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